【適当になっていませんか?】カラムクロマトグラフィーのやり方

カラムクロマトグラフィーの図 化学

どうもー。けみかですー。

前回は真空ポンプを使用する際の注意点について説明しました。頻繁に使う機械だからこそ、丁寧に扱って長持ちさせたいものです。

さて、今回は有機合成に携わる者としては避けて通ることの出来ない、カラムクロマトグラフィーのやり方を紹介します。

カラムクロマトグラフィーとは?

筒状の容器(カラム管、またはエリュート管などと呼ばれます。)に充填剤を詰め、精製を施す化合物(粗生成物、クルード)を含む溶液を上に乗せ、適切な溶媒(展開溶媒)を流すことで、化合物と充填剤との相互作用の強さの差を利用して目的物と不純物を分離する操作です。

充填剤としてはシリカゲルアルミナ活性炭などが使われますが、ここでは最もポピュラーなシリカゲルカラムクロマトグラフィーを扱うこととします。

一般的に化合物が高極性(アルコールやアミンなど)であるほどシリカゲルとの相互作用は強くなるため、より長くシリカゲルに吸着され、溶出されにくくなります。

カラムクロマトグラフィーの操作手順

それでは、具体的にカラムクロマトグラフィーのやり方について順を追って説明していきます。

Step 1:展開溶媒の決定

カラムを掛ける前に、まずはTLCを使って展開溶媒を決定します。TLCはガラス製のものを使うのが一般的かと思いますが、アルミ製のものも市販されています。

アルミTLCはハサミで切れるので簡単に大きさを調節できますが、柔らかいためすぐに変形してしまうのが難点です。私はどちらも使用したことがありますが、個人的にはガラスTLCのほうが好きです。

私のやり方としては、まず縦5 cm、横1 cm程度の大きさにTLCを切断します。次に、両端から0.5 cmの距離のところに、鉛筆で直線を弾きます。

そして、クルードの溶液をキャピラリーで吸い、TLC下端に先ほど鉛筆で引いた線の上に打ちます。

最後に適当な溶媒で上端に鉛筆で引いた線まで展開し、目的物のRf値が0.2~0.3程度となるような溶媒を探します。このときの溶媒を、実際にカラムで使用する展開溶媒とします。

Rf値は、【(溶媒が上端に達したときの目的物のスポットから下端までの距離)÷(上端から下端までの距離)】で求められます。以下の図では、b/4が求めるべきRf値となります。

理論的には、実際のカラムではシリカゲル容積の(1/Rf)倍の展開溶媒を流せば、そのスポットの化合物が出てくるはずです。

例えば、Rf値が0.25ということは、以下のTLC上で展開溶媒が4 cm進む間にその化合物は1 cm進んだことになります。つまり、その4倍の量で展開することでその化合物は4 cm地点(=カラム管の下端に相当)に達することが出来ます。

TLCの説明

TLCの展開には専用の展開槽も市販されていますが、私は普段はサンプル管を代用しています。安いので。

なお、シリカゲルは酸性のため、酸に弱い化合物は分解してしまうこともあります。この場合は、シルカゲルの代わりにアルミナを使うか、または展開溶媒に1%程度のトリエチルアミンを加えることで概ね回避することが可能です。

Step 2:シリカゲルの充填

展開溶媒が決まったら、いよいよカラムの準備を始めましょう。

まず、カラム管の下側のコックの穴に脱脂綿を詰めます。こうしないと、カラム管にシリカゲルを入れた側から出てきてしまうことになりますからね。

次に、海砂を適量加えます。これはシリカゲルを充填する前のクッションの役割を担います。

なお、海砂は芒硝(硫酸ナトリウム)でも代用可能です。もちろん芒硝と反応する可能性のある化合物を精製する場合や、芒硝を溶かしてしまう溶媒(水など)で展開する場合には使用できませんが、かなりレアなケースでしょう。

ここでようやくシリカゲルを詰める作業に移ります。

使用するシリカゲルの量は、クルードのおよそ20~30倍の重量を目安にしています。例えば、クルードが1 gであればシリカゲル20~30 g程度を用います。

また、シリカゲルの充填方法には湿式法乾式法の2種類があります。

湿式法は予めシリカゲルを溶媒に浸しておいたものを充填する方法で、乾式法は先にシリカゲルをカラムに充填して後から溶媒を流す方法です。

しっかり詰まればどちらの方法でも問題無いのですが、個人的には湿式法をお勧めします。乾式法の方が操作は簡単ですが、本当にちゃんと充填されているのか見た目で判断しづらいので不安になるんですよね。。

なお、シリカゲルを充填した後、更によく詰まるようにカラム管を手やゴム管なんかで叩くという操作をする人もいます。私は学生時代の研究室でそのように教わりましたが、意味があるのかは正直よく分かりません。。溶出が遅くなるからと叩くのを嫌う人もいますし、この辺は人それぞれですかね。

Step 3:クルードのチャージ

シリカゲルの充填が終わったら、いよいよクルードをシリカゲルの上に乗せる(チャージする)ことになります。

ここで、クルードの濃縮物をそのままチャージしている人もいますが、テーリング(化合物がダラダラ出続けること)の原因になりがちなのであまりお勧めしません。少量の展開溶媒に溶かしてからチャージしましょう

このとき、シリカゲルの面が崩れないように慎重にチャージすることが重要です。

チャージが終わったら、一度カラム管のコックを開けてクルードの液面がシリカゲルの上面に達するまで溶媒を流します。

次に、展開溶媒を注ぐ際にシリカゲルが崩れないようにするため、再びクッションとして海砂(または芒硝)を少量加えます。これで準備完了です。

Step 4:精製の実施

準備が終わったら、展開溶媒を海砂の上からカラム管の上端まで注ぎます。

コックを開けると溶媒が流れるので、これを一定量ずつ取り分けていきます(フラクション)。受け器としては三角フラスコや試験管を使用する場合が多いですね。

先述したように、目的物はシリカゲル容積の(1/Rf)倍の展開溶媒を流した時点から溶出してくるはずなので、使用したシリカゲルと同じ容積ずつ取り分けていけば、第(1/Rf)番目のフラクションに目的物が存在しているはずです。

…が、実際にピッタリその理論通りに行くことはほとんど無いです。また、目的物と極性の似た不純物は分離しにくいので、私はフラクションの容積を小さめにして実施することが多いです

得られたフラクションのTLCを逐次チェックし、目的物の含まれるフラクションをすべてまとめて濃縮すれば精製完了です。

微量の不純物も排除したい場合には、目的物の出始めと出終わりのフラクションを除外してまとめると、スポットの近接した化合物をある程度除ける場合があります。蒸留でいうところの初留カットみたいなものですね。

なお、化合物が特異な色を有する場合は、その化合物が流されるのと同時にシリカゲルの色も変わっていくので、TLCをチェックするまでもなく、またフラクションの量を考える必要もなく、単純に目視でその目的物を分取することも可能です。

おわりに

以上、シリカゲルカラムクロマトグラフィーのやり方を流れを追って説明しました。

今回の記事では一般的な手法の説明に留めましたが、次回はちょっとしたテクニックや注意点を中心に書きたいと思います。

ではでは!

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