「聲の形」について【ディスコミュニケーションの悲劇】

放課後の教室 アニメ

こんにちは。けみかです。

第9回、今回は聲の形について書きたいと思います。

本作品は以前公開時に映画館でも観ているのですが、今回観て改めて良い作品だと思いました。というかもう「京都アニメーション」っていう文字だけで泣きそうになってやばい…。

というわけで、感動冷めやらぬうちに記録に残しておきたいと思います。

基本情報

©大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

聲の形は、大今良時(おおいま よしとき)さんの漫画で、週刊少年マガジンにて初版(オリジナル版)が2011年に、リメイク版が2013年に掲載されました。そして、2016年に京都アニメーションによって映画化されました。

ストーリー

生まれながらに聴覚障害を持つ西宮硝子は、小学校6年生のときに石田将也たちのクラスに転校してきた。自己紹介の際に硝子の耳が聞こえないことが判るとクラスにはどよめきが生まれたが、彼女は筆談用のノートを持って積極的にコミュニケーションを取ろうとした。

はじめこそ穏和な雰囲気で交流をしていたものの、言葉を上手く話せないことが原因で授業が中断してしまうことも多く、それに伴うクラスメイトたちの苛立ちから、次第に彼女をからかい苛めるような雰囲気が醸成されていた。

特に、硝子が身に着けていた補聴器を将也が幾度となく取り上げて投げ捨てていたことは校内でも問題となった。この件について担任の竹内に問い質される場面で、将也は「植野島田川井も一緒になって硝子を苛めていた」と主張したものの、彼らは一様に「自身に責任は無く、全て将也が悪い」と、全ての原因を将也に押し付け、硝子の転校後は苛めの対象を将也に移した。

自身が苛めの対象となってようやく硝子への罪悪感を覚えた将也。高校3年生になって硝子と再会し、懸命に手話を覚えて硝子との接触を試みようとするが、彼女の妹の結弦や母親の八重子に遮られてしまう。肉親を傷つけた張本人に対しては当然の態度だろう。

それでも必死に関係の改善に努めた将也は、最終的には硝子や結弦、八重子と4人で一緒に花火大会に出掛けるまでになるが、その最中に硝子は一人その場を立ち去ってしまう。結弦からカメラを持ってくるように言われて偶然硝子の家に立ち寄った将也は、まさに今ベランダから飛び降りようとする硝子を目撃し、叫んで制止を試みるも声は届かず硝子は身を投げ打った。「私といると将也は不幸になる」と考え至った末の選択だった。

間一髪のところで硝子の手を掴んで引き上げることに成功したものの、その反動で将也自身が落下して昏睡状態に陥ってしまった。これを機に硝子は自身の精神的な弱さと向き合い生きていくことを決める。

主要登場人物

©大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会
左から、佐原、硝子、結弦、永束、将也、植野、川井、真柴

石田将也(いしだ しょうや、CV:入野自由):小学生の頃、転校してきた硝子に対する苛めの主犯格となった。補聴器紛失の件では計170万円という予想外の高額さに狼狽し、母親にその代金を支払わせることになったことを酷く悔いていた。クラスの苛めの対象がが自分に移って以降、慙愧の念に駆られて硝子との関係を修復しようと努める。

西宮硝子(にしみや しょうこ、CV:早見沙織):聴覚障害を持ち、転校先の小学校で苛めに遭う。高校生になって将也と再会し、以前は自分を苛めていたにも拘わらず、手話を覚えるなど自身とコミュニケーションを取ろうと必死になる将也に好意を抱くようになった。

西宮結弦(にしみや ゆづる、CV:悠木碧):硝子の妹。姉を苛めていた将也を嫌悪し、その男の子のようなルックスから、当初は「自分は硝子の彼氏」と称して将也が硝子に近づかないよう牽制していた。しかし、将也の硝子への献身的な態度から徐々に心を許していき、結局は二人の関係を応援するようになる。

植野直花(うえの なおか、CV:金子有希):小学生当時、将也と同様に硝子への苛めに関わっていた。密かに将也への恋心を抱いていたが、学級裁判では保身のために将也一人に罪を被せる結果となり、以降声を掛けるのを躊躇うようになった。にゃんにゃん倶楽部店員。

佐原みよこ(さはら みよこ、CV:石川由依):苛めに遭っていた硝子に対し友好的に接していた唯一の同級生。手話を覚えてコミュニケーションを図ろうとするも、クラスメイトからはそれを「点数稼ぎ」と揶揄され、不登校になってしまう。高校では植野と同じ学校・クラスになった。

川井みき(かわい みき、CV:潘めぐみ):優等生的存在の女の子だが、自身の立場を最優先に考え、これが侵害されるようなら相手を陥れることも厭わない。将也と同じ高校に進学するが、あるとき将也に自分も苛めに関わっていたことを指摘されると、川井は「将也が単独で硝子を苛めていた」と泣きながら訴えて憐みを誘い、さながら悲劇のヒロインのように振舞っていた。

感想

冒頭でも書きましたが大事なことなのでもう一回。放送のはじめのテロップの、「京都アニメーション」という文字列だけで泣きそうになりました。はい。あれからもう1年以上経ちますが無念でなりません。本当に。

さて、本作品は公開当時映画館でも見たのですが、今回の放送で改めて良い作品だと思いました。将也がスバルっぽいとか永束が峰田っぽいとかそういうのは置いといて

アニメに限らず、障碍者を主体に扱った作品はいわゆる「お涙頂戴」な仕上がりになっているものも少なからずありますが、この聲の形の焦点は単純に障害そのものではありません。ひとことで言えば「ディスコミュニケーション」が最大のテーマでしょう。

聾唖者である硝子は他者との会話に筆談や手話を必要とするため、現実的にコミュニケーションが難しく、その結果としてクラスメイトとの間に軋轢が生じ、将也や植野らから苛めの対象とされてしまいます。これは分かりやすい例でしょう。

続いて、補聴器紛失の一件から開かれる学級裁判では、担任の竹内はその主犯格として将也を吊し上げます。このとき、植野や島田にも意見を聴取しますが、彼らの「すべて将也が悪い」という主張に何ら疑義を唱えることはありませんでした。

竹内がもっとちゃんと調査していれば、ひいてはもっと前から積極的にクラスと関わっていれば、硝子への苛め自体を防げていたかもしれません。

そして、苛めの対象が自分に移ったことで、将也は自分が硝子に対して行ってきたことに対する罪悪感と後悔から、ずっと俯いて生きていくことになりました。作中では将也の周囲の人物の顔に「×」を付けるという手法で、将也の「相手の顔を見られなくなり、コミュニケーションが取れなくなってしまった」ことを表現していましたね。

©大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

物語の終盤、将也と硝子は一緒に文化祭を歩いて回ります。昏睡状態から回復した将也を、周囲は驚きを以て迎えますが、ここでも将也はやはり人の顔を直視することが出来ないでいました。

しばらくして永束や真柴、川井、植野と再会します。橋での出来事から気まずく思っていましたが、素直に謝罪して彼らに受け入れられたことが契機となり、ようやく顔を上げて歩けるようになりました。

ラスト、周囲の人たちの顔から「×」印が剥がれていくシーンはとても印象的でしたね。これこそが、将也のコミュニケーションに対する不安が解消されていく様の描写であり、この物語の終着点です。

もちろん、心を開いた将也に入ってくるのは全てが耳当たりの良い言葉だけではありませんが、そうではないネガティブな言葉も受け入れて生きていく覚悟が出来たことを示しているのだと思います。

話は変わりまして、硝子の声の担当は早見沙織さんだったのですね!このブログでも扱った「四月は君の嘘」の井川絵美や、「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」のリュー・リオンの役を演じていらっしゃいます。

今回は聴覚障害を持つ女の子という非常に難しい役だと思いますが、それはもう圧巻の演技力でした。私と同じように驚かれた方も多いのではないでしょうか。

さて、まだまだ書きたいこともありますが、長々と続けるのは好きじゃないのでこの辺で筆を置くこととします。長くとも1記事あたり4000字以内には収まるよう精進していきたいです…。

ではでは!お読みいただきありがとうございました!

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