【学生から社会人まで】有機化学の専門書おすすめ5選

本が積み重なっている様子 化学

こんにちは。けみかです。

今回は、実験から離れておすすめの専門書をご紹介したいと思います!

有機化学に限らず、数学でも物理学でも巷には数多くの専門書があふれていて、特に初学者の方は「一体どれを使えばいいんだ…?」となりがちです。

そんなとき、同級生や先輩におすすめはどれかを聞いてみても、バラバラな答えが返ってくることもよくありますね。

そこで、今回は私がこの十数年で読んできた専門書の中で特におすすめできるものを5つご紹介します。

ジョーンズ有機化学(難易度:★★)

有機化学の教科書と言えば「マクマリー有機化学」がポピュラーかと思いますが、私の所属していたところではこの「ジョーンズ有機化学」を中心に授業が進められていました。

私が初めてまともに読んだ参考書ということもあってちょっとバイアスが掛かっているかもしれませんが、特に初学者には分かりやすい1冊だと思います。

上巻と下巻に分かれており、上巻では軌道論の初歩から入りアルカンアルケンアルキン類の化学を説明したあとに立体化学の章が設けられています。ついでSN1SN2などの置換反応E1E2などの脱離反応の解説後、付加反応ラジカル反応について学びます。分光分析NMRIRなど)の基礎も含まれています。

下巻では、芳香族化合物の性質や反応ののち、有機化学の中で最も重要度の高い(と個人的に思っている)カルボニル基近傍の化学を学びます。また、ペリ環状反応隣接基関与などの特殊な項目も扱われています。更に、アミノ酸ペプチドなどの生化学に近い領域に関しても、その基礎となる部分を紹介しています。

デザインは全体的に複数の色が使われているものの視覚的な煩さは感じさせず、特に反応形式の理解には優れていると思います。

基礎的な部分を丁寧に説明しているので初学者にはおすすめです。私の感覚では初級~中級者向けといったところでしょうか。レベルの高い高校生なら十分読み進んでいけるかと思います。

その反面、あまり難しい部分には突っ込んでいないため、ジョーンズを読み込んだらより難易度の高い専門書を読むことが必要です。

また、それぞれの章末に問題がついており、その問題に関する解答・解説も別冊として英語版のみ市販されています。

ウォーレン有機化学(難易度:★★★★)

ジョーンズ有機化学を一通り理解したら、ウォーレン有機化学を読んでみることをおすすめします。個人的には、有機化学を学ぶすべての人に最もおすすめしたい一冊です。

この本も上下巻に分かれています。ジョーンズで書かれているおおよその内容を網羅しており、更に細かなところまで解説されていて、「痒いところに手が届く」一冊となっています。

一方で、ジョーンズではあまり取り上げられなかったヘテロ化合物の性質や反応性逆合成不斉合成の理論、有機金属化学などについても扱っています。

もちろん、それぞれの分野に特化した専門書に比べればカバーしている領域は狭いですが、広く有機化学を学ぶ上での参考書としては十分すぎるほどの情報を掲載しています。

テキストや図は黒と赤の二色刷りというシンプルなデザイン。個人的にはジョーンズみたいなデザインの方が好きなのですが、まぁ悪くはないです。

こちらも章末には問題が掲載されており、解答は英語版のみ市販されています。

演習で学ぶ有機反応機構:大学院入試から最先端まで(難易度:★~★★★★★)

有機化学を学ぶ上で重要かつ躓きやすいのが、反応機構です。複雑な反応になれば、たとえベテランでも反応式を一瞥してすぐにその機構が思い浮かぶ人は稀だと思います。

この本は福山透教授の研究室内でのセミナーで実際に出題された問題が主として掲載されており、問題はその難易度によって「初級編(78問)」「中級編(128問)」「上級編(109問)」に分別されています。

大学院入試レベルであれば初級編が全て解ければ御の字といったところでしょうか。中級編まで出来れば有機化学を専門とする仕事についても問題なくやっていけると思います(とか言うと先生に怒られそうですが…笑)。

全ての問題について巻矢印式で反応機構の解答が示されています。ただ文章が少ないのでもうちょっと丁寧な説明が欲しかったなと思いますが、たぶん分からないときは自分でちゃんと文献を探して読めということなのだと思います(?)

これだけ反応機構に関する内容に特化した問題集は他に無いので、有機反応の学習に際してはぜひ持っておいてほしい一冊ですね。

ウォーレン有機合成:逆合成からのアプローチ(難易度:★★★★)

ウォーレン有機化学と名前は似ていますが、内容は全く別のものです。

この本では逆合成解析及び合成戦略の立て方に主眼を置いています。ある化合物を作ろうと思ったときに、「何を原料として」どうやって合成を進めていくか」をシステマティックに判断していく手法を解説しています。

例えば、「1,4-ジケトンの逆合成ではC1-C2結合またはC3-C4結合を切断する」、「シクロヘキセン環の合成にはDiels-Alder反応を利用する」など、化合物の構造に応じた合成の指針を示してくれています。

「確かに言われればそうだな」という内容であっても、実際に自分で化合物の逆合成解析を行おうとすると手が止まってしまうこともあるかと思います。そんなとき、このように明示された指針を覚えておくと助かりますね。

また、逆合成に関する問題に特化した本としては、ちょっと古いですが「プログラム学習 有機合成化学」という問題集がおすすめです。

この本の著者もウォーレンであり、様々な化合物に対して実際に逆合成解析を行うことでその考え方を身に着けることができるようになっています。

40年以上前に出版された本になるので、当時には無かった合成法により簡便に合成できるというものもありますが、逆合成に関する基礎的な考え方を会得するには相応しい良書です。

プロセス化学 医薬品合成から製造まで(難易度:★★★★)

この本では、ラボでのフラスコ合成から製造現場での釜製造にスケールアップする際の留意点などを詳しく説明しています。どちらかと言えば企業研究者向けの本ですね。

医薬品合成を担当するプロセスケミストに向けて書かれているため、ICH(医薬品規制調和国際会議)の基準に合わせた残留溶媒元素不純物の抑制など専門的な項目も多いですが、スケールアップを志向したパラメーターの設定方法や後処理の方法など、医薬品に限らずあらゆる化合物のプロセス研究をしている方には大変参考になると思います。

このあたり、大学で研究をされている方にはあまり馴染みの無い話かもしれませんが、化学系メーカーーに就職して研究所や生産技術の部署に配属されると、スケールアップ研究の重要性に関して口酸っぱく言われることになります。

基本的にはOJTで学ぶことが多くなると思いますが、「自分でも何か文献を使って勉強したい!」と思ったとき、この本は大きな助けになることでしょう。プロセス化学者のバイブル的存在です(主観)。

おわりに

今回は私が個人的におすすめする有機化学の専門書を5冊紹介しました。

まぁなんだかんだ言っても結局は実際に自分で読んでみるまでは分からないんですよね、どれが自分に合った本かだなんて。

ですが、今回挙げた5つはどれも自信をもっておすすめできるものですので、ぜひ一度手に取って読んで頂ければと思います。

ではでは!

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