【ちゃんと使わないとすぐ壊れます!】真空ポンプの使い方

横型真空ポンプ 化学

こんにちは!けみかです!

今回は、有機合成実験には欠かせない真空ポンプについてのお話です。なお、真空ポンプにも色々な種類がありますが、ここでは油回転ポンプを指すこととします。

化合物の蒸留乾燥脱気及び不活性気体への置換など、その用途は様々ですが、いずれもしっかりやっておかないと実験の結果に支障が出る重要な操作です。

色々な研究室で汎用されている真空ポンプですが、ちゃんと使い方を守らないとすぐに壊れてしまうので注意が必要です。

安価なものもありますが、壊れる度に修理していてはコストが膨大になってしまいます。そのお金を他の用途に使った方が効率が良いのは言うまでもありません。

真空ポンプの種類

真空ポンプは、その形状から横型(モーター直結型)と縦型(ベルト駆動型)の二つがあり、実験室ではどちらもよく使われています。

横型真空ポンプ
© SATO VAC INC.
横型真空ポンプ(佐藤真空製)
縦型真空ポンプ
© SATO VAC INC.
縦型真空ポンプ(佐藤真空製)

排気性能ポンプの置き場所を固定するなら横型が、移動させて使いたい場合は縦型が優れています。

私は、自分の実験台で化合物の乾燥を行うときなどは横型を、共用ドラフトで蒸留を行うときなどは縦型を使用しています。

真空ポンプのメーカーとしては、上の画像で示した佐藤真空の他にはULVACのものをよく見かけますね。価格としては、実験室でよく使う通常のスペックのものは10万~20万円程度。耐酸のポンプはもう少し値が張ります。

それに対し、ポンプが壊れて修理をしてもらうとなると、もちろん程度にもよりますが数万円必要となることも珍しくありません。なので丁寧に扱いましょうね。

真空ポンプ使用時の注意点

とても便利な真空ポンプですが、使用の際には以下のことに気を付けましょう。

冷却トラップを使おう!

例えば、ある化合物中に含まれている溶媒をエバポレーターで留去したあと、微量残った溶媒を完全に飛ばすために真空ポンプを使うことはよくあります。

このとき、直接フラスコをポンプに繋げると、溶媒がポンプオイルに混ざってオイルの劣化を早めるだけでなく、大量の有機溶媒を吸い込んだ場合には火災を生じる可能性も懸念され非常に危険です。

そこで、ポンプとフラスコの間に冷却トラップを挟むことで、気化した溶媒を液体として補足し、ポンプ内に流入するのを防ぐことが出来ます。

溶媒トラップ
(C) TAITEC CORPORATION

このトラップを、下に示すデュワー瓶に入れ、ここに冷媒を加えて使用します。

デュワー瓶
©THERMOS K.K.

冷媒としては、液体窒素アセトンバス(アセトン+ドライアイス)を使うのが一般的です。

液体窒素は単純に注ぐだけで良いので楽ですが、極低温(-196 ℃)のためトラップした溶媒の融点(大気圧下)以下となることがほとんどです。故に、多量の溶媒を飛ばすときは何度かトラップを外して中の溶媒を廃棄する必要がありますが、凍っているためその度に溶かさなければならないというのが少し面倒です。

一方、アセトンバスの温度は-78 ℃であるため液体窒素の場合に比べれば凍る溶媒も少ないですが、それは同時にポンプ内への溶媒の侵入を許してしまうことも多くなるというデメリットにもなります。また、いちいちドライアイスを砕く作業が必要になるのも煩わしいですね。

いずれの方法でも溶媒を100%完全に補足することは出来ませんが、トラップを使用しない場合に比べたら遥かにマシです。これだけでもポンプはかなり長持ちするようになります。

アルカリトラップを使おう!

冷却トラップと同様に重要なのがアルカリトラップです。酸性物質の蒸留や乾燥を行う場合には必ず使用しましょう。

酸がポンプ内に入ると、オイルを構成する分子の重合が促進されタール状の物質が発生します。また、当然ながら金属部分のサビにも繋がります。

そこで、上に示したトラップに顆粒の水酸化ナトリウム水酸化カリウムを詰めて使用します。こうすることで酸性物質が補足され、ポンプ内に侵入するのをある程度防ぐことが出来ます。

先述の冷却トラップとアルカリトラップを繋げて使用すると非常に効果的です。

定期的にガスバラストを行おう!

近年市販されている大抵の真空ポンプには、ガスバラスト弁がついています。

ガスバラスト(Gas Ballast)とは、オイル内に入り込んで凝集した成分を外へ追い出す機能のことです。オイルが高温の時に効率よく作動するので、ポンプを起動してしばらくしてからガスバラスト弁を開け、数分間動作させると効果的です。

但し、ガスバラストを長時間行っているとオイルも排気されてしまい、到達真空度の低下の要因となるので気を付けましょう。

定期的にオイル交換を行おう!

残念ながら、以上に挙げた対策をいくら講じようと、オイルの劣化を100%防ぐことは不可能です。どんなものでも、どれだけ大切に使っていても壊れる時は壊れます。

なので、定期的に新品のオイルに交換するようにしましょう。交換頻度は使用状況にもよりますが、半年に1回程度で十分な場合が多いかと思います。

また、オイル交換の際は、古いオイルを抜き出したあと、「新しいオイルを少量入れて数秒間運転する」という内部を洗浄する操作を何度か行うと効果的です。

おわりに

今回は、研究室で頻繁に扱う真空ポンプの使用上の注意について述べました。まとめると以下のようになります。

①冷却トラップの使用

②アルカリトラップの使用

③ガスバラストの実施

④定期的なオイル交換の実施

私はこの10年の間に何度か所属研究室を変えていますが、その度に真空ポンプの使い方やメンテナンスの仕方が異なっており、研究室ごとの文化が如実に現れる点の一つだと思っています。

そのため、ここには書かなかったようなオリジナルな対策を行っている研究室も沢山在ると思います。いずれにせよ、大事に丁寧に扱って少しでも長くポンプを使うことが出来るといいですね。

ではでは!

コメント

タイトルとURLをコピーしました